院長メッセージ

早期がんと内視鏡

内視鏡医にとっては早期の病変をいかに発見するかが勝負どころ

早期に発見された、食道・胃・大腸・咽頭のがんは、おなかや胸に穴をつくらず、内視鏡1本で治療することが可能です。

内視鏡本体から小さな電気メスを出して、がんを剥ぎ取ります。
メスのサイズは2-5mm程度。
穴をあけないように、粘膜の表面だけ剥ぎ取る、非常に繊細な処置です。

ピロリによりる胃炎がひどかった方は、同時に複数個の早期がんが出現することもあります。
むかしなら、胃全摘出といわれていたような病気が、いまはほとんど後遺症なく、1週間程度の入院で治ってしまうこともあります。

早期発見する技術も、非常に発達しています。

日本の内視鏡レベルは世界一です。
とくに微小な病変を発見する技術は飛びぬけています。
その検査を保険診療でも受診できる日本は非常に恵まれている、と思うのですが、まだまだ受診率は上がりません。

楽に検査を受けていただく方法も進歩しています。
不調がある方は今すぐに、
症状がなくても40歳すぎたら、ぜひご受診ください。

ピロリ菌①

ピロリ菌に感染しているかどうか、ご存知ですか?

ピロリ菌による慢性胃炎は、5歳以下の免疫が不十分な時期に感染することによって起きます。
大人になってからの感染は一時的で、自然免疫で除菌されることがほとんどです。
感染は、口うつしやなま水の摂取が原因とされています。

慢性胃炎があると、全生涯で10人に1人程度が胃がんを発症するといわれています。(年率0.4%)
ピロリ菌感染に対して除菌治療を行うと、胃がんの発生が1/3に抑えられる!
という衝撃的な日本のデータが2008年のLancet(という権威ある雑誌)に掲載され、そこから一気に除菌治療が行われるようになりました。

では、どういう方に除菌治療をおこなうのか?
①胃カメラで慢性胃炎と診断されている。
かつ
②ピロリ菌感染が陽性
(血液、尿、便、呼気、培養、生検などいろいろな検査法があります。)
というのが除菌治療スタートの条件です。

検査の順番も、
まず①胃カメラ、つぎに②感染診断、
と定められているのですが、最近は検診で②だけしておられる方も多いですよね。

除菌治療は基本的には1週間、抗生剤と制酸剤(胃酸を抑えるくすり)を内服します。90%程度の方が一回の治療で除菌完了します。

ただ、どんな治療もかえって体調を悪くしてしまうリスクが伴います。
ご高齢の方、体調がもともと悪い方や、胃カメラでみて炎症が弱い方は、積極的な治療をしなくていいと思っています。
ABC検診でB判定(胃炎の程度は軽いけどピロリ陽性)など、ちょっともやもやしている方、できれば内視鏡検査を受けてもらったほうが、リスクをきちんと判断できます。

ピロリ菌②

ピロリって本当に厄介なのです

幼児期に感染して、知らないうちに慢性胃炎を起こし、胃に不可逆的な(後戻りできない)変化を残していきます。
この変化のことを萎縮性胃炎とか、胃粘膜の萎縮、とか呼んでいます。

胃がんのリスクは、この萎縮の程度によって決まると言われています。

胃の粘膜の萎縮が無いもしくは軽い方の胃がんリスクを1としたとき、
萎縮が中等度⇒リスク3倍
萎縮が高度⇒リスク6倍
とされています。
萎縮の程度によって、1-3年ごとの内視鏡検査が推奨されます。

ご自分の萎縮の程度は、内視鏡医にお聞きになってくださいね。

また、多くは若い女性にみられる鳥肌胃炎というタイプのピロリ胃炎は、萎縮タイプのピロリ胃炎に比べて胃がんリスクが10-20倍とも報告されています。
早めの除菌治療が勧められるのはこのためです。

萎縮の程度は、血液でわかるペプシノーゲン検査もしくは内視鏡検査で判断できます。
除菌後の方についてはペプシノーゲン検査が正確でないこともありますので、内視鏡検査で判断した方がよいと思います。

むずむず脚症候群と鉄不足

むずむず脚症候群は鉄不足が一因である

ガイドライン等にも記載されているようですが、最近はじめて知りました。
睡眠不足の一因となるむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は、慢性的な睡眠不足や疲労による生活の質(Quality of life) 低下が問題となります。

日本人の有病率は2-5%
原因は
①ドパミン機能障害
②遺伝的要因
③鉄代謝の異常
など

パーキンソンの病態も①が関連するので、治療薬は抗パーキンソン薬などが使われるようです。
逆に吐き気止めによく使う抗ドーパミン薬(プリンペラン、ナウゼリン)はむずむずを悪化させます。

むずむず脚をみたら、
・鉄不足がないのか血液検査でチェック
・鉄不足なら、原因となる病態(消化管の出血や過多月経)がないかをチェック

これを肝に銘じました。
むずむず足、鉄分不足でお困りの方はご相談ください。

脂肪肝

検診で肝機能、引っかかっていませんか?

成人男性の30%は脂肪肝といわれています。(思い当たる方、多いですよね)

①肥満(過食・運動不足)
②インスリン抵抗性(血糖値がさがりにくい)
が原因です。

さらに
・脂肪肝の方の10-20%は『脂肪肝炎』
・脂肪肝炎の方は5年間で20%が『肝硬変・肝がん』
に進展すると言われます。
嫌なデータですね。

ただし、脂肪肝から『脂肪肝炎』に進展するためには、次の要素が必要と言われています。
1、エンドトキシン(細菌由来の毒)
2、酸化ストレス・鉄過剰
3、脂肪毒性
4、炎症性サイトカイン
5、遺伝的素因
などなど。

1、エンドトキシンの供給源は、腸内細菌叢に存在するグラム陰性桿菌、とくに嫌気性菌といわれています。
さらに、肝臓側でエンドトキシンに過剰反応してしまうことも炎症に進展する原因といわれます。

要するに腸内細菌が悪いと太るし、肝炎になるし、良いことがありません!!

腸内細菌を整えるために、まずはふだんのお食事で、
「きちんと噛んで、食事中の水分は控え目に、食事前後はリラックス」
を心がけ、
適度な運動で適正体重を保つ。

ぜひ実行されてください。

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