皆様こんにちは、まきこクリニック院長の船越です。
本日のコラムでは、「アルコールとの付き合い方①」として胃腸を専門とする消化器内科の視点から『アルコールの害』について解説いたします。
🟣アルコールが胃腸や肝臓に及ぼす害
① 胃の粘膜を傷つける
アルコールは胃の粘膜を直接刺激し、炎症を引き起こします。胃の粘膜が炎症を引き起こすと、胃もたれ、胃痛、胃炎、胃潰瘍などを招くこともあります。特に、空腹時に飲むアルコールは胃を傷つけるリスクが高いと言われています。
② 腸内環境への影響
過剰なアルコール摂取は腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを乱し、下痢や便秘を引き起こす原因になることがあります。また、腸の免疫力が低下し、炎症性腸疾患の症状を悪化させる可能性もあります。
③ アルコール性肝疾患
アルコールを分解する肝臓にも当然影響が及びます。慢性的な飲酒は脂肪肝、アルコール性肝炎、さらには肝硬変や肝がんへと進行する可能性があります。
④ 食道がんや大腸がんのリスク
飲酒は、食道がんや大腸がんの発症リスクを高めると言われています。特にアルコールだけではなく、喫煙を併用する場合には、食道がんや大腸がんのリスクはさらに増加します。
アルコールは適量であればリラックスや食事の楽しみを増やす効果がありますが、過剰な摂取は胃腸をはじめとする身体の健康に深刻な影響を及ぼします。
自分の健康状態や生活習慣を見直しながら、適度にお酒と付き合うことが大切です。胃腸の不調やお悩みがある方は、京都市伏見区にあるまきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニックまでお気軽にご相談ください。
『胃腸のお悩み相談』
🟣アルコールが原因となる『がん』
【食道がん】
毎年10万人あたり35人(男性30人、女性5人)が新たに診断されるがんの一つが食道がんです。食道がんは、男性に多く見られることが特徴で、日本では主に扁平上皮がんと腺がんの2つに分類されます。特に、日本人の食道がんの90%以上は扁平上皮がんが占めています。
食道扁平上皮がんは、口腔から食道まで連続する扁平上皮細胞ががん化したものです。そのため、食道がんはしばしば頭頸部がん(咽頭がんや喉頭がんなど)と重複して発生することがあります。
さらに胃がんや大腸がんとの重複も珍しくありません。このような背景から、当院では胃カメラ検査の際、内視鏡スコープが通過する喉の粘膜も念入りに観察し、食道がんの早期発見に努めています。
一方で、食道腺がんは、逆流性食道炎などの慢性的な炎症の発生に関与しているとされています。逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで起こる炎症であり、これを繰り返すことで腺がんのリスクが高まると考えられています。
欧米では、食道がんの半数以上が腺がんで占められていますが、日本でも近年、逆流性食道炎の患者数が増加しており、それに伴い食道腺がんの発症も増加傾向にあります。そのため、食道の早期の検査や胃カメラ検査による予防対策が重要とされています。
【食道がんについて】
【大腸がん】
大腸がんは、盲腸、結腸、直腸に発生するがんを指します。
国立がん研究センターによると、1日のアルコール摂取量の平均が23グラムを超えると大腸がんになりやすく、さらには男性の大腸がん患者さんの約1/4が、適量を超えるアルコール摂取(1日あたり23グラム以上)が原因で大腸がんになったと考えられるそうです。
ビールの中ジョッキ2杯でアルコール26グラムとなり、『23グラム』というのは決してすごく多い印象ではありません。
大腸がんの多くは、放置された大腸ポリープから発生するとされています。特に、大腸ポリープはサイズが大きくなるほどがん化のリスクが高まります。中でも、将来的にがん化する可能性が高いポリープは前がん病変と呼ばれ、小さいポリープの段階で切除することが大腸がんの予防に繋がります。
当院では、大腸内視鏡検査を通じて、ポリープの早期発見と適切な治療を行い、大腸がん予防を実施しています。気になる症状がある方や定期の大腸カメラ検査をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
アルコールによる脳の障害
長期にわたってアルコールの摂取をつづけると、食事のバランスの悪さやビタミン消耗などの原因で脳が委縮することがあります。
その結果、認知症や手足のしびれ、ふらつきなどの症状が出現します。
アルコールは上記以外にも慢性膵炎や糖尿病、脂質異常症、貧血、特発性大腿骨頭壊死症などなど多くの病気を引き起こします。
アルコールは遺伝的な体質の違いで、より少量のアルコールで害のでやすい方もおられます。以前言われていた『少量のアルコールは体に良い』という通説を否定する研究結果も多くあります。
『これくらいは大丈夫』と毎日飲み続けず、楽しむときは楽しむがふだんは禁酒する、などメリハリをつけて節酒するように心がけるのが肝要です。